研究内容

創る:酵素重合による非天然型多糖の合成と構造・物性解析

植物細胞壁などから抽出した多糖は,多くの場合において均一な化学構造を有しておらず,精製しても取り除くことができない夾雑物が存在します.酵素を上手く活用すれば,天然には存在しない構造の制御された純粋な多糖を合成できます.我々は,新たな特性を有する高分子材料の開発を目指して非天然型多糖を酵素触媒重合し,構造と物性との相関解析を進めています.

現在進行中の関連テーマ
グルカンスクラーゼGtf酵素群により合成された非天然型グルカンの構造解析と機能材料の創成

調べる:NMRによる多糖の構造解析と新規解析手法の開発

核磁気共鳴(NMR)は溶液もしくは固体状態の物質の構造を解明する有力な手法であり,ハードウェア・方法論ともに発展を続けています.我々は,酵素触媒重合を利用した13Cラベル化に加え,高速MASや多次元法など最新のNMRテクニックを積極的に取り入れつつ,様々な多糖の構造解析を進めています.また,特殊な動的磁場により微結晶を三次元的に精密配向させる技術(擬単結晶化法)と固体NMRを組み合わせた,新しい構造解析手法の開発も試みています.

※ 擬単結晶化法についてはこちら(準備中)

現在進行中の関連テーマ
磁場配向微結晶懸濁体(MOMS)のためのin situ固体NMRシステムの開発と手法確立
還元末端にアジ基が導入されたセルロースIIオリゴマーの構造解析
バクテリアによる同位体ラベル化セルロースの合成と固体NMRによる構造解析
あて材・樹皮の固体NMRによる構造・ダイナミクス解析

制御する:高度に配向が制御された環境調和型材料の創成

材料からその究極の性能を引きだすためには配向制御が重要です.それにより,光学的,力学的,電気的,熱的,圧電的な,材料の持つ固有の物性を極限まで発揮させることができます.植物繊維であるセルロースは様々な処理により,パルプレベルからナノウィスカーレベルまでのサイズの繊維に調製できます.我々はこれらのセルロース繊維を磁場や電場で配向させる技術を確立し,光学フィルム,ソフトアクチュエーター,力学的異方性フィルムなどの開発を行うとともに,酵素触媒重合による非天然型多糖やその他バイオベース素材などへの応用展開を進めています.

現在進行中の関連テーマ
表面修飾されたセルロースIIオリゴマー結晶の磁場配向化
核剤からのエピタキシャル成長を利用したポリ(L-乳酸)の三次元磁場配向化と構造・機能制御

上記以外にも,バイオマス・バイオ系材料の構造解析や構造・機能制御に関する研究を積極的に展開しています.

現在進行中の関連テーマ
高濃度LiBr水溶液からのセルロースヒドロゲルの作製と物性評価ならびに高機能化
木質・バイオマス材料への応用を指向したMRIシステムの構築
3D像構築を通じた木材腐朽プロセスの観察
環境水中におけるセルロース系材料の生分解性の評価